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〜 タックスエンターテイメント小説 〜 「税務調査最前線」 第7話『こいつら取調室だな』第4章 (〜ウソ言ってんじゃないよ!〜) (山口上席調査官達が多田税理士の事務所を訪問し、小石川家の家族名義の預金について、資料の一覧表を多田税理士に手渡し、家族名義の預金等についての原資の調査依頼をしたのだった。そして、数日後、小石川昭夫から多田税理士の携帯電話に連絡が入ったのだった。小石川は興奮していた。) 「ねえ、多田先生ヒドイでしょう。あいつら女房や私に向かって、机を叩いて怒鳴ったんですよ。まるで犯罪者扱いですよ、あれじゃあ。いくら税務署だって私達を脅していい訳がないですよねー。それに、脱税しているだろう認めろと強要するんですよ。何を言っても聞いてくれなかったんですよ。」 「確かに13年分の売上については、売上を削っていた私達もいけないんですが、そのことは今日真っ先に謝ったんですよ。それなのに、もっとあるだろうと言って私達の言い分を何も信用してくれないで、一方的に税務署の言い分を認めさせようとしたんですよ。」 小石川昭夫は、尾戸巣税務署に呼び出されて、面会に行った時のことを興奮した声で多田税理士に話したのだった。 「小石川さん、悔しくないね。税務署にそんな扱いされて、バカにされて。」 小石川の話しを聞いて怒りが込上げてくる多田税理士であった。 「悔しいですよ。めちゃめや悔しいですよ。確かに私達も悪いんですが、あんなに怒鳴られたりして、正直恐かったんですよ。女房は、統括官とか言う人に怒鳴られて、何か叫んでいましたよ。」 「そうですか、分かりました。詳しい話しを聞きに行きますから。その時までに、今日のことを紙に書いておいてくださいね。出来るだけ具体的にお願いします。税務署員は何と言われたか、その言葉をしっかり思い出しておいてくださいね。」 多田税理士は、後日の訪問の約束をして小石川からの電話を切った。 多田税理士は怒っていた。確かに小石川は、平成13年分の売上を160万円ゴマカシていた事は認めた。しかし、いや、であっても、通常の税務署の任意調査の範囲を大きく逸脱していることは明白であった。 多田税理士の税法の勉強会で、主催者の沖山税理士から、同じ勉強会の税理士からの税務調査の相談を聞いていたが、まさか自分の前に「暴力的な税務調査」の事例が飛びこんでくるとは思ってはいなかった。 ただ、沖山税理士から各地での悪質な税務調査の話しを聞いて「そんなヒドイ税務署員がいたら俺の前に出て来い、やっつけてやる!」と思っていたのだが、現実のものとなったのである。 やはり、「思いは実現する」のであろうか。 しかし、現実的な対応に多田税理士は悩んだ。 「俺の顧問先が怒鳴られたら直接怒鳴りこむんだが、今回の所得税は委任も受けていないしなぁ。所得税はウチが月々顧問をしていないから、何が出てくるか分からんし。でも、相続税だけの委任で済ませられないよなあ。」と思い悩んだ末、沖山税理士に相談することにした。 多田税理士は、「民法・商法と税務の接点」に関する本の執筆者になっており、最近は、1週間に一度は沖山税理士と会っていたのだった。 小石川昭夫から電話があった翌週の月曜日である。出版会議に出席していた沖山税理士に相談を持ちかける多田税理士であった。 「先生、実は、納税者から電話がありまして、税務署員に机を叩かれたり怒鳴られたりしたそうなんですよ。」と小石川のことを沖山税理士に話したところ、沖山税理士が即座に答えた。 「多田さん。あんた税務署と大喧嘩せんね。そんなことがあったらね、すぐ税務署に怒鳴りこまんといかんね。直接相手に会って、怒鳴ったのは貴様か〜 納税者をなんだと思っているんだ。って強く言わんといかんよ。それに、告発状を書いて持って行ったらいいよ。すぐせんといかんね。」 沖山税理士の強い姿勢に、戸惑ってしまう多田税理士であった。 「告発状ですか・・・」 「うん。告発はね、誰でもできるんよ。刑事訴訟法239条にはね『何人でも、犯罪があると思料するときは、告発をすることができる』と書いてあるね。」
「告発状はね、警察でも検察庁でもいいんだけど、やっぱり検察庁やろうね。告発状が出されたら、検察庁が調べて、起訴するかしないかを決めるようになっているんよ。」と沖山税理士が説明する。 多田税理士は、少々気が引けていた。沖山税理士が発する「刑事訴訟法」「犯罪」「告発」「検察庁」などと言う単語にビックリしていたのだった。 税理士は、税法や民法・商法などにはなじみがあるが、刑法には全くなじみが無く、言葉尻を聞くだけでも恐いものを感じるのであった。 「あーそれと、あんたホームページを持ってたよね。だったら、実名報道するよーって言えばいいよ。そうよ、そんな悪質な税務署員はホームページで実名報道をしなさいよ。」 「えー、実名報道ですか・・。」と少々たじろぐ多田税理士であった。 「うん、それとね。税務署の副署長とか総務課長にこんな違法調査があったことを知ってるのかって言いに行くといいね。質問書を書いて持っていって、この質問に答えなさい。税務署としてどんな見解を持っているのか聞かせてほしいって言いに行かんといかんね。」と沖山税理士の話しは続く。 尾戸巣税務署は副署長はいませんから、総務課長でしょうね。分かりました。では、納税者に税務署に呼び出された時のことを詳しく聞いて、それから、質問書を書くことにします。また、よろしくお願いします。」 多田税理士は、沖山税理士に指導してもらった通りやってみようと考えていた。 しかし、心中穏やかではない。いくら、税務署員が机を叩いたり怒鳴ったりしたとはいえ、刑事告発とか実名報道とか、過激な言葉に恐さを禁じえない多田税理士であった。 数日後、多田税理士は小石川宅を訪問することになったのだが、小石川の営む米屋の女性事務員が話したいことがあるので、事務所の方に寄ってほしいとのことだった。 女性事務員は、小石川商店の経理事務を一手に引き受けていた。9月からの税務調査でも、税務署員の質問にも彼女が答えていたのだった。 「あのうー、多田先生。実はお話があるんですけど。」と言い出す女性事務員の目にうっすらと涙が浮かんでいるのを多田税理士は見逃さなかった。 「うん、どうしたんですか。うんうん。へー、あなたも税務署に呼び出されていたんですか。そうですか。それで。」「エーーそんなことがあったんですか!」と多田税理士は思わず大声になった。 いったい、女性事務員に何が起こっていたのだろうか! 次回をお楽しみに。 |