|
〜 タックスエンターテイメント小説 〜 「税務調査最前線」 第7話『こいつら取調室だな』第13章 (〜ウソ言ってんじゃないよ!〜) (多田税理士は、納税者が税務署内で怒鳴られ机を叩かれて脅された事実を、自分のホームページに掲載した。そして、沖山税理士に報告したのだが、その報告の直後から、ホームページのアクセス数が急増してきたのであった。) 多田税理士は、実名報道の五日後、新規クライアントとの打ち合わせを済ませ、車で事務所に帰ろうとした時、携帯電話が鳴った。沖山税理士からだった。 「ああ、多田さんね。今、大丈夫ね。それで、ホームページの方はどうね。」 「あっ、はい。実名報道の2〜3日後は、アクセス数はあまり変わらないんですが、昨日は1日で200件くらいになってまして、急に、増え出したみたいです。先生が、宣伝してくれたんですよね。」と、急激にホームページのアクセス数が増加した原因は、沖山税理士の応援しか考えられなかったので、率直に聞いてみたのだった。 「うん。福岡や鹿児島の勉強会のみんなに、多田さんのホームページに実名報道が載っとるから見てって連絡したんよ。まずまずやねえ。」 「やはり、先生のおかげでしたか。急に増えたんで、びっくりしてたんですよ〜。やっぱり、先生の一言は違いますねー。」と、感心しまくる多田であった。 「いや〜。まだまだ、これからよ。じゃんじゃん強気でいかんといかんよ。これでもか〜っていうくらいでいかんといかんね。」と、元気一杯の沖山税理士だ。 「・・・」黙って携帯電話の声を聞いている多田税理士は、「じゃんじゃんいくって、何をこれ以上するんだろう」と、沖山税理士の心中を察してはいなかった。 「あのねー。ホームページにね、尾戸巣税務署の住所と電話番号を書いてね、じゃんじゃん電話をかけてもらうんよ。私達も、クライアント10件に10人づつ電話をかけてもらうんよ。」と、沖山税理士。 「電話ですか〜」と、どんな電話をかけてもらうのかピントきていない多田税理士であった。 「うん。みなさんにね多田税理士のホームページの内容は事実かどうか聞いてもらうんよ。抗議なんかせんでいいんよ。ただ、納税者を怒鳴って脅かした事実があるのか聞いてもらうんよ。あなたも、まだ、怒鳴った事実があったかどうか返事をもらっていないんやろ。納税者が、税務署で怒鳴られるなんて一大事よ〜。だから、脅かした事実があったのかどうかを、納税者は知る権利があると思うんよ。ね、多田さん。」 多田税理士は、携帯電話を手に持ち、急に緊張してきたのだった。つまり、事がだんだん大事になってきたので、その分不安感も高まってきたのだった。 しかし、納税者の知る権利も重要なことだと思い、電話作戦を納得した多田税理士であった。 「あっ、そういうことなんですね。分かりました。私も友人知人に頼んでみます。あっ、それと親にも言ってみます。そうですね。納税者の知る権利がありますからね。」と、多田税理士は返事を返した。 「そうよ。尾戸巣税務署の総務課を機能麻痺にしてやらんとね。事の重大さをわからせにゃあいかんからね。私も、電話を頼むからあんたもね。よろしく。じゃあ。」 多田税理士は、「ホッ」とため息をついた。やはり、事態の急激な発展に戸惑う自分と、よしやるぞという自分とが錯綜していたのだった。 多田税理士は、週に一度は、実家で昼食をとっていたので、今日も、実家にもどって昼食の食卓で両親に尾戸巣税務署でのクライアントの出来事を話していたのだった。黙って、多田税理士の話を聞く両親。 「卑怯かね〜尾戸巣税務署のヤツどもは。自分達が公務員ちゅうことば知らんとやなかかぁ。バカにしとっじゃなかか納税者ば〜。フン。」と、多田税理士の父親は憤慨した様子であった。 「そうなんよ。ひどかろ〜。国民の公僕が聞いて呆っるよね〜。まったく。」と、多田税理士も相槌を打つ。 「おまえ、そしたら、その報告書と質問書は今持っとるとか。見せてみらんね。どら。」と、多田の父。 「ふんふん。なーるほど。うん。う〜ん。ほっ、ほ〜〜。へぇ〜。うん。ようでけっと。お前が書いたとか。」と、父は多田税理士に尋ねる。 「うん。俺が書いたとよ〜。沖山先生から教えてもろうたばってん、文章は俺が書いたとよ〜。」と、上機嫌の多田税理士である。 「うん。大人のケンカはね。怒るばっかいじゃあいかんとばい。こんな風に『どうなんですかね〜』って、相手の一番痛いところをバカ丁寧に責めんばさい。」 「そして、相手ばカッカと怒らすっとさい。そがんやってケンカばせんばと。そいばってん、お前ようこがん文書ば書いたね。う〜ん。お前も成長したね。」と、父は、息子の成長が嬉しかったようである。 「なんばいいよっね、とうちゃん。俺もう44歳よ。まあ、ばってん、とうちゃんに誉めらるっことも滅多になかけん嬉かもんね。」と、多田は実家では、佐賀弁まる出しになってしまうのであった。 「まあ、息子の成長はいくつになっても嬉しいもんたい。それで、電話ばかくっぎよかとな。う〜ん。お前の書いた文章ばよ〜う読んでから、じっくい考えてから電話ばかくったい。おいも、公務員が納税者ば脅したとかどがんか聞きたかけんね。」 「分かった。電話ばかけたら、話しばすっけん、もちょっとしてから、また昼飯に帰ってこい。」と、多田の父は、気合が入っているようである。 「うん、とうちゃん。そいぎたのんだけんね。」と、言い残し、多田税理士は実家を後にして、事務所に向かったのであった。 「うーん、誰に電話を頼もうかな。よし、彼に頼もう。あっ、そうだ彼もいるな。うん、馴染みのインターネットの掲示板にも書き込みをしてみるか。そうしよう。それと、そうだ、同業者の勉強会の掲示板にも尾戸巣税務署の件を載せよう。」と、多田税理士は、考えつくいろんなルートで、尾戸巣税務署の暴挙を伝えようと必死になっていたのだった。 さあ、沖山税理士と電話攻勢の打合せをした12月18日のHPのアクセス件数は、前日の夕方からまる1日で600件近くにのぼり、翌19日の夕方までのまる1日のアクセス件数は1,000件を越えた。 19日の午前中に、小石川彩子から電話があった。内容は、調査に来た人と違う人から『所得税の調査の件でそちらの都合のよい日時にお伺いしたいと電話があったんですけど、調査でしたら多田先生にお願いしてますので、多田先生に連絡して下さい』ということだった。 「ははー。電話が多くかかってきたんで先方は動き出してきたな。」と、多田税理士は考えた。山上総務課長が電話してきたんだろうと直感した。 そして、19日の午後2時に尾戸巣税務署の山上総務課長から多田税理士に電話がかかってきた。 「小石川さんの税務調査の件でお話したいのですが、ご都合の程はいかがなものでしょうか。」やけに、バカ丁寧なもの言いで、どことなく落ちつきのない山上総務課長の声であった。12月13日に『検討中ですっ』っと、突き放したもの言いではなかった。どこか、懇願するような響きを多田税理士は感じとっていた。 多田税理士は、小石川の都合を聞いてから返事をすると伝え電話を切り、小石川彩子に日程調整を依頼したのだが、なかなか返事は来ない。この間、尾戸巣税務署では、混乱状態が続いており、多田の父親も電話をかけていた。その電話の内容とは・・・。 次号の展開をお楽しみに。 |