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税務調査最前線 第2話 第1章『クリスマスプレゼント』 (売上が洩れていたのに、税金が戻る?)
多田税理士は、福岡市天神にある大丸デパートのパサージュ広場のクリスマスツリーを眺めながら一人で歩いていた。11月になるとあちこちにクリスマスツリーが登場し、年末の気分を伝えてくれる。
多田税理士は、最近顧問先になった相沢商事社長の相沢と食事をしての帰りであった。 相沢商事は、電気資材の卸をしている会社で、初代社長が一代で年商10億円企業に育て上げた会社であるが、5年前初代社長が亡くなり、専務をしていた長男が後を継いで社長となっていた。 2代目社長の相沢は、初代社長時代からの税理士に不満を持っていたので、経営計画をサポートしてもらえる税理士を金融機関に紹介してくれるよう頼んでおり、年齢の近い多田税理士の登場となったのである。 「相沢商事さんのとこは、クリスマスの電飾も扱うようになったと言ってたが、パサージュ広場のクリスマスツリーの電飾も相沢商事さんがやったのかな」 などと、多田税理士は一人思いながら、クリスマスツリーの電飾を眺めていたのでる。 翌朝、多田税理士の事務所に博多税務署から電話が入った。 「多田先生ですか。私は、博多税務署の法人税担当の山田と申します。お忙しいとは思いますが、先生が顧問をされている相沢商事さんに調査にお伺いしたいと思うのですが、ご都合はいかがでしょうか。」 通常、税務調査が行われる場合、税務署から、まず、顧問税理士に電話連絡が入ることになっている。今回の場合、前任の顧問税理士に税務署から電話が入り、顧問税理士の交替が分かったので、会社から多田税理士の存在を聞いていたのである。 相沢商事には、先代社長が亡くなる直前に税務調査が行われていたので、若干サイクルが早目だが、通常の税務調査と考えてよいだろう、と多田税理士は思っていた。 「はい、分かりました。では、先方に調査の件を伝えて、日程調整してから、返事の電話を当方からかけますので、それでよろしいですか」と、多田税理士は答えた。 「はい、よろしくお願いします。」と、山田調査官が返事をして、電話を切った。 早速、多田税理士は相沢商事の社長に税務調査の件を伝えると、相沢社長は急に大声で話し出すのであった。
「先生、なぜうちに税務署が来るんです か。うちみたいなちっぽけな会社に来なくても、上場企業に行けばいいじゃないですか。」 「先生から、調査に来ないように言って下さいよ」 相沢社長は、税務署に来てもらっては困る「何か」があるのか、それとも税務署嫌いなのか、多田税理士に食ってかかる勢いで話すのであった。 「まあまあ、落ち着いて下さい。税務調査は受けなければならない義務があるんですよ。また、税務署から質問があったら返答しなければならない義務があるので、税務調査を断る訳にはいかないんですよ。」 「でも、税務調査の日程は自由に決めていい訳ですから、社長の都合の良い日程を教えて下さいよ。社長は、調査の初日か最終日に顔を出すだけでいいですから。」
多田税理士は、相沢社長をなだめながら、税務調査の日程を決めたのであった。 「何であんなに、相沢社長は興奮したんだろう。普段は紳士的な社長なのに。なんか税務署に来られちゃあマズイことでもあるのかな?」 多田税理士は、顧問になったばかりの相沢商事の税務調査なので、若干の戸惑いを感じてはいるものの、経理状況もしっかりしているし、掛売り商売なので、大きな売上の洩れはないだろうと思っていた。 ただ、相沢社長の税務調査に対する異常な反応が気になっていた。 博多税務署の山田調査官に税務調査の日程を告げ、当日を迎えた。 「おはようございます。博多税務署の法人税担当の山田です。」と言い、身分証明書を提示する調査官であった。 「おはようございます。私は、相沢商事さんの顧問税理士の多田です。よろしくお願いします。」 「私が、社長の相沢です。よろしくお願いします。」 気のせいか、相沢社長の声が震えているようにも感じられる。 「本日は、法人税の調査と言うことで、お伺いしました。前回は、5年前に調査でお伺いしてますので 直前の3年分の調査と言うことになります。」 「前回の調査では、交際費の問題ぐらいで大きな問題はなかったようですね。」と、山田調査官がやんわりと話し掛ける。 「前回の調査は、私が社長でなかったから、詳しいことは分かりません。今日は、忙しいので30分程で出かけますが、よろしいですか。」 これは、多田税理士との打ち合わせのとおり。相沢社長が、税務署と会いたがらないので、多田税理士との打ち合わせで、早々出張してもらうことになっていたのである。
「ああ、いいですよ。お忙しいですね」と、山田調査官もあっけなく、社長の外出に納得している様子であった。 「では、売上の請求書と元帳と預金通帳を見せて下さい。」早速、調査に入る山田調査官。なかなか落ち着いている。 一人黙々と、書類とニラメッコをしている山田調査官であった。夕方になって、山田調査官から話し掛けてきた。 「先生、この1月に現金100万円の入金があるんですが、何の入金ですかね。元帳を見ると現金売上になってますけど、相沢商事さんは卸だから、掛売りが100%だと思うんですけど」 「はあ、そうですね。経理の方に聞いてみましょう」 多田税理士は、山田調査官の指摘を経理に聞いてみると、あっけなく答えてくれた。 「それはですね、4年前に社長が営業で取ってきたデパートのクリスマス用電飾の売上ですよ。売上にあがってるのでいいんじゃないですか」と経理は答える。
「では、相沢商事さんの決算期は12月なので1月に入金した100万円は売上洩れということになりますね」と横で話を聞いていた山田調査官が言った。 「まあ、それが事実だとするとそうなりますね」と答えるしかない多田税理士であった。 そんなやり取りをしている内に、社長が帰って来て、100万円の入金の内容を知ったのであった。 「エー、あの100万円を12月の売上に入れてないんですか。おかしいなー」経理と何やら話し込む相沢社長であった。そして、 「いやーまいったな。うちは経理が3人ぐらい入れ替わってて、現金入金は売上だと前任者が誤って引き継ぎをしてたみたいです。確かに、12月の売上です。」
相沢社長は、素直に経理のミスを認めた。そして、クリスマス用の臨時売上は、4年前の当時から現金入金時に売上を計上していたことが判明した。 「では、先生100万円の売上洩れということで、修正申告をお願いできますか?」山田調査官は言う。 多田税理士は、「仕方ないな」とは思ったが、税務調査にめっぽう詳しい沖山税理士に「トイレ電話」で状況を説明してみることにした。すると、 沖山税理士からとんでもない答えが帰ってきた。 「そんな状況だったら、税金戻してもらえるんじゃないかな」と沖山税理士は答える。 なぜ、売上が洩れているのに、税金が戻るのだろうか? そんなことが果たしてできるのだろうか その答えは、・・ |